“未来の風景のように、自動的に開いた硝子戸の先には、先日、あまりにもかわいくて写真を撮ってもいいですか?と聞いてしまった、受付の女性が今日もまた立っており、こちらはそこまでの躁状態でなかったので、恥じらいがしっかりと手に残っており、ぎゅっと握りしめながら、先月の自分とは他人のオレである自分自身を作り出し、平然と挨拶をする。向こうも、どう見ても、先月のキチガイなのだろうが、先月とは様相が違うので、今月は鬱なのか、と慣れた顔つきで、業務用の挨拶を僕に投げてくる。よし、これでいいんだ。これが社会だ。社会というのは、そのような先月見たあの猟奇的な世界を全て忘れたことにするという約束なのだ。約束と使命とミサイルが、ラテン語では全て同じ語源をもとにしているということを、隣の病人に伝えたとしても、ここでは平然と頷いてくれるのだ。”
- Journal -Kyohei Sakaguchi-
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